長沼訴訟:憲法関連の裁判例。
この裁判は、北海道の長沼町という所に自衛隊基地をつくろという国策の為に昭和44年当時の農林大臣が基地予定地の保安林の指定を解除して自衛隊基地を建設する手はずを整えようとしたところ、長沼町の地域住民が「俺たちの地元に自衛隊の基地なんか作るんじゃねー!」と猛反対。
「そもそも自衛隊は憲法に違反しているんだからその自衛隊の基地を作るためにやった保安林の解除は無効だ!」と農林大臣の行った保安林の指定解除という行政処分行為の無効を争って裁判を起こした、長沼事件、長沼ナイキ基地訴訟等とも呼ばれている事件。
前に挙げた砂川事件でも争点となった「戦争の放棄」と「平和的生存権」が争点となった事件でもある。
ただこの事件は第一審で違憲判決が出たことによってかなり有名な事件となった。
第一審判決(札幌地裁)
前文に言う平和のうちに生存する権利は、裁判規範としての基本的人権であって、第3章の各条項によって具体化されている。
として、平和的生存権を認め原告勝訴という結果になっている。
しかし、第二審ではこの結果が逆転し原告は敗訴している。
第二審では自衛隊の自衛隊の存在等は治的判断によるところが大きく所謂統治行為であって裁判所の判断する範囲を超えているという結論を下している。
第二審判決(札幌高裁)
自衛隊の存在等が本条に違反するか否かの問題は、統治行為に関する判断であり、国会及び内閣の政治行為として究極的には国民全体の政治的批判に委ねられるべきものであって、違憲性が一見極めて明白でない限り、裁判所が判断するべきものではない。
このように一見明白説を採用して、その判断を政治的なものとして原告敗訴判決を言い渡したのである。
そんなことを言われても第一審で勝訴までしているのだからこのまま食い下がるという訳にもいかないし食い下がりたくもない原告側は、最高裁判所に対して上告をしているわけであるが、この最高裁判所の判断が何とも拍子抜けするものとなった。
最高裁判所判決
住民には原告適格なし。棄却。
最高裁判所はそもそも地域住民には原告適格が無く、裁判を起こす権利がそもそもないという判断を下した。
…今までの裁判は一体なんだったというのだ。
最高裁判所は、原告適格なしという判断のみ行い、自衛隊の問題などには一切触れていない。
受験対策としての長沼訴訟
「憲法に一見して明白に反すると言えない場合、裁判所の違憲審査の対象とはならない。」
結論だけ見れば、砂川事件と同じだ。
長沼訴訟:憲法前文関係関連ページ
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